たまたま衛星放送で西田敏行さん主演 山田洋次監督の「学校」という映画をやっていました。1993年に公開された夜間中学の話です。西田敏行さんが先生(黒井先生)の役。で、ちょうど田中邦衛さん扮する56歳の生徒が、ものすごく濃いキャラクターで、熱演しているシーンから見始めたもので、一気に引き込まれました。
[画像は予告動画より拝借]
夜間中学って、様々な事情があって、昼間、学校に通えなかった人が通いますよね、大抵の場合。で、映画の中でも、生徒には、それぞれに背景があって、もうそれだけでドラマチックなんです。中でも田中邦衛さん扮する猪田幸男には、特に心奪われました。猪田さんは諸事情あって、小学校には三年生までしか通えなかったのです。だから、基本といわれる読み書きソロバン(とは今はいいませんから九九ですかね)が、できないわけです。そんなこともあって、「お酒の力を借りないと学校には行く勇気がでない」とかいって、一杯ひっかけてから登校しちゃうんです(笑)で、それを受けた西田敏行さん扮する黒井先生も「わかりますよ」とあたたかく迎える。いいでしょう?
そんな型破りな生徒 猪田さんと黒井先生ですが、国語の授業の一環で、ハガキを書くことになりました。はじめは、乗り気じゃなかった猪田さん。でも先生にこんな風に教えてもらい、目の色が変わります。
文章は、ただ、要件を伝えるためだけのものではない。面と向かって言いにくい「気持ち」を伝えることができる、と。
それを聞いて猪田さんは一念発起しました。生まれてはじめて文章を書くことに挑戦します。しかもラブレター。今みたいにラインもメールない時代ですよ。50歳を過ぎたオジさんが、一所懸命、たどたどしい文字を書く様子に、心打たれました。
それで思ったのが、どんな立場や境遇にあっても、その置かれた場所で精一杯いきている人は、輝くのだなということ。
それからもう一つ、文章に気持ちを込められるというのは、時代が変わっても変わらないことだな、と。
わたしは、わりと文章を読んだり書いたりすることが好きなんですが、それは、いわゆるバトルタイプでも、パフォーマンスが得意なタイプでもないからです(簡単にいえば、声が大きいタイプかな)。でも、表現したいことは心の中にある。
少し前までは、このバトルタイプとパフォーマンスが得意なタイプの人には光が当たりやすかったように思います。一方、そうでないタイプの人は、その良さが認識されにくい傾向があったのではないでしょうか。
ですが、今は個人で発信できるツールが色々ありますから、たとえ派手なパフォーマンスが得意でなくても、競争に打ち勝とうとしなくても、その魅力を伝えることができてしまいます。なおかつ、正直な自分を表現し、正直な自分の気持ちに徹してコミュニケーションをとっていれば、波長の合う人と引き合うことができる時代だと思います。
西田敏行さん扮する黒井先生が、こんなセリフを言っていました。
「私たち夜間中学の教師は、昼間の学校と違って、教え導くなんて考えではイケナイ。背負っている人生は、生徒の方が重いことも多いのだから。だからこそ、魂と魂でぶつかり合うこと、心を裸にして、人間対人間同士として付き合うことが大切」と。概ねこんな感じ。
これは教師と生徒ではなく、ビジネスでも同じではないかなと思いました。基本は「ひと対ひと」です。だからこそ、素の自分といいますか、裸の自分を表現することが大切なのではないでしょうか。そうすることで、お互いにとってベストな相手と巡り会えるから。わたしはそんな風に考えています。